『ホール・ブレイン 心が軽くなる「脳」の動かし方』ジル・ボルト・テイラー、脳科学者が脳卒中から学んだこと 考察と感想

本の紹介

今回は、ジル・ボルト・テイラーさんのホール・ブレイン 心が軽くなる脳の動かし方の本を踏まえて瞑想家としての視点から、考察と感想をまとめてみましたので、どうぞ最後までご視聴ください。またこちらの本をもっと知りたいなと思った方は、ぜひご購入頂ければと思います。

この方はTEDですごく有名になった方です。また奇跡の脳という書籍もベストセラーになっています。今回紹介する本は、奇跡の脳の内容をさらに発展させ、具体的に脳を4つのキャラに分けて説明し、具体的にどうしたらよいのかまでまとめています。

私がこの本を紹介するのは、神経解剖学者が瞑想に関しての大きなヒントを与えているからです。この方は学者でありながら、彼女は脳出血による左脳の機能を失ったときに「心安らかな幸福感と宇宙との一体感」を経験しています。実は私がいくつか体験した瞑想体験とものすごく酷似しているんです。正直、すごい大きな衝撃を受けています。

今回は、本の感想と考察に当たって、3つのカテゴリに分けて説明をしたいと思っています。

それでははじめていきます。

1つ目 ジル・ボルト・テイラーさんの左脳機能不全になった時の体験

『脳卒中の一種である脳出血を起こした日の午後には、歩くことも、話すことも、読むこと も、 書くことも、自分の人生さえ何ひとつ思い出すことができませんでした。 私はいわば、 女性の体をした幼児になっていたのです。想像していただけると思いますが、私は神経科 学者の視点から、自らの脳が系統的に機能停止するのを観察することに魅了されました。 左半球への損傷は重篤で、話したり言語を理解したりする能力を失うことが予想されまし た。さらに、左脳のおしゃべりな「モンキー・マインド」も黙ってしまいました。内なる 対話の回路が遮断されたことで、私はまる五週間、しんと静まりかえった脳の真ん中に、ぽつんと立っていました。「 私は全体から切り離された個人。私はジル・ボルト・テイラー 博士」 というような、左脳の自我の小さな声すら失ってしまいました。おしゃべり好きで、ものごとを順序だてて考える左脳がいなくなり、私は畏敬の念を覚えるような「今この瞬間」という感覚に足を踏み入れました。そこはとても美しい場所でした。』

ジル・ボルト・テイラー. WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方 (p.14). NHK出版.

➡まずご理解いただきたいのは、左脳が機能不全を起こすと、「モンキーマインド」が治まってしまったということです。人の思考は猿のように動き回ると言いますが、これをどうするのかは瞑想の重要なテーマなんです。モンキーマインドが収まると、静寂が訪れていて、自我の声が失っている、そして美しい場所での今この瞬間の感覚です。これって、完全に瞑想の到達する境地を表しています。通常、瞑想ではこの状態になるためには、自我の声やモンキーマインドを手放していくトレーニングをしていきますからね。

『左脳の細胞が外傷を受けて停止したとき、私が失ったのは、細胞と肉体的なスキルだけではありませんでした。私の人生を熟知し、賢く、規律 正しく、時間を守り、細部にこだわり、 几帳面で、計画的…… そんな意欲的な人格を失ってしまったのです。この人格は、 脳出血とともに消え、脳の細胞が回復して回路がオンラインに戻るまでは、現れなくなり ました。また、過去のあらゆる困難や感情や苦痛を知っていた、 別の人格も失われました。 このような自分にアクセスできなくなっ たせいで、私は「今この瞬間」の平和な幸福感に 浸ることしかできなくなりました。』

ジル・ボルト・テイラー. WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方 (p.21). NHK出版.

➡この内容もとてもすごいことが書かれていますね。いわゆる人格がなくなったということと同時に、過去のあらゆる困難や感情や苦痛を知っていた別の人格も失われ、今この瞬間の平和な幸福感に浸ることがしかできなくなってしまったわけなんです。苦しみをなくし軽やかに生きることを目的として私は情報発信させて頂いているんですが、まさにそうなっています。仏教瞑想ではピティ(喜)とスッカ(楽)が訪れている状態ですね。いわゆるジャーナ(禅定)が深まった境地です。もしかすると喜(ピティ)も消えてさらに深いジャーナに至っている状態に酷似しているかもしれません。瞑想は、きちんと行えていくと思考や人格らしきものも静まっていくんですね。そして喜や楽が表れていき、安らかな状態になるわけです。なので瞑想体験と酷似していてとても面白いと思いました。

『言語中枢が沈黙したとき、私は他人とだけでなく、自分自身 とのコミュニケーション能力も失いました。だれかに話しかけられても、しゃべることも 理解することもできないうえに、意味をもった文字や数字を見分けることすらできません でした。脳出血の前は、左脳に「 ジル・ボルト・テイラー」としてのアイデンティティ〔 心理学で自分は何者か、という概念のこと。 自己同一性〕を作り出す細胞群があったから、 自分がだれであるかがわかっていました。左脳の、自我を作り上げているこのような細胞 は、 私がだれでどこに住んでいるか、好きな色は何かなど、 細かい点を山ほど知っていました。私についての情報をすべて把握できるよう、日夜はたらいていました。私、ジル・ボルト・テイラーは、左脳の、自我を作る細胞が「私は存在している!」と告げるからこそ存在していたのです。』

ジル・ボルト・テイラー. WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方 (pp.58-59). NHK出版

➡言語の概念の世界がなくなるということを、左脳が機能しなくなったときにはっきりと経験されています。音が音として単純に入ってくるのをそのままにしている状態です。そうなるとただ単純な音だけの世界になります。左脳が機能しなくなって起きています。

また左脳が機能しなくなると私がなくなるんですね。瞑想中、私という存在自体がなくなる体験をする方って多くいると思います。例えば私が消えて、全てと一体となった経験がある方はいらっしゃると思います。みなさん子供のころの記憶ってみなさんあまりないと思うのですが、私は子供の記録にアクセスできたことがあるのですが、まったく私がないんですよ。面白いですね。

2つ目 脳の中の4つのキャラ

テイラーさんは、左脳の機能停止を通じて、また神経解剖学者として、脳内を4つの領域に分けて、キャラ分けしています。ここについては、大まかな分類について、共有させていただきます。

ここでは左脳と右脳の違いに注目すると、とても興味深い世界が見えてくると思います。

3つ目 脳の作戦会議

「自動運転のような生活をしていると、4つのキャラたちは、私たちが実際に何をすべきかには一切おかまいなしで好き勝手に行動します」といっています。つまり自動運転ではなく、脳の作戦会議でお互いに影響し合いながら、一丸となって人生を歩んでいくことが重要。それで脳全体「ホール・ブレイン」をいかした人生が送れるようになると断言できると言っています。

作戦会議をするには、チーム形成と同じでそれぞれのキャラを理解する必要がありますね。それぞれ個性的な存在ですから、それぞれの主張を出し合っていく。

脳の作戦会議の仕方 BRAINの頭文字をとっています。

1.BREATHE(呼吸に集中する)ブレス

 ➡これは仏教でいうアハパナサティという瞑想に類似します。いわゆる呼吸瞑想ですね。

2.RECOGNIZE(識別する、気づく、認識する)レコグナイズ

 ➡キャラを識別する、気づく、認識する。これは今の状態に気づき(サティ)をいれる

  ヴィッパッサーナー瞑想やマインドフルネス瞑想に類似します。

3.APPRECIATE(正しく評価する、感謝する)アプリシエイト

 ➡それぞれのキャラに感謝すること。

4.INQUIRE(尋ねる、意見を出し合う)インクワイア

 ➡キャラに意見を出し合わせる。

5.NAVIGATE(舵をとる)ナビゲイト

 ➡意思決定。

これらの順序で作戦会議を行い、世界の中でどのような人になり、どのようにふるまいあたいのかを選択する力があるのですと言っています。

さいごに

この本を読んで思った一番の感想は、瞑想って左脳が機能しなくなったことを指すのみたいな結論になってしまうなんですね。そして最終的には右脳の新皮質領域を活性化させていくことになります。私は、瞑想って全身を使った構造であると感じているんですけど、脳だけで考えてもきちんと説明ができちゃっているんですよね。もしかしたら、完璧な世界の中では、部分が全体とつながっていて、脳で説明しても体で説明しても語れる世界なのかもしれません。

ただ脳の構造は最終的にはまだわかっていることが全てではありませんし、これからの科学の進展によってもっと明らかになっていくと思います。脳機能局在論的視点は、かなり多くわかっていることも増えていますが、脳全体としての機能で考えたときに、複雑な構造となってくる可能性は十分にあり得ますし、今後の科学の発展に期待したいところです。

みなさんどうでしたでしょうか。

天道としては、カウンターパンチをくらったような衝撃的な本でしたが、とても面白かったです。

天道
天道

引用参考文献は、下記となっております↓

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